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天竺めざして、引きこもる。

いまより知的で気楽に生きるために役立つ本を紹介します。

天竺めざして、引きこもる。

【書評】人類は進歩しているのか?ー「サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福」

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(2021年5月2日 追記)

★要約記事を作りました。

 ①上巻分

sunuse.hatenablog.jp

 ②下巻分

sunuse.hatenablog.jp

 

サピエンス全史は「なぜ人類は繁栄したのか?」と言う壮大なテーマを解き明かす。

 

ボリューミーであるが、専門用語の羅列ではなく、人類の歩みが物語仕立てで語られていくので、退屈せずに読みすすめていくことができる。

これまで、ピュアな好奇心から専門書に手を出しては、難解な記述に心を折られてきたが、この本は好奇心の赴くままスイスイ読み進めることができる。

 

内容面の良さについては、さまざまなサイトで語られているが、私が強く惹きつけられたのは、生き方を考えるうえでの示唆に富んでいる点である。

 

上巻を読んで、特に考えさせられたのは、「集団の繁栄は、必ずしも個人の幸福の増大に結びつかない」ということであった。

人類の歴史の大躍進と言われる農業革命がまさにこれにあたり、著者は農業革命を史上最大の詐欺だと言い切っている。

 

農業革命は、約1万年ほど前より、世界の各地で人類がいくつかの動植物種の生命を操作することに、ほぼすべての時間と労力を傾け始めたことを指す。それまで人類は、250万年にわたって、植物採集や動物を狩って食料とする、狩猟採集の暮らしをしてきた。

 

農耕により食糧の総量が増え人口は拡大した。つまり人類は種としては発展した。一方、個人の生活水準はむしろ下がった。栄養バランスは穀物過多になり、収穫は天候に左右されるため、安定的な食糧確保にも寄与しなかった。時間の多くを農業労働に費やすことになり自由を失った。

 

豊かな生活を求めて始めたはずの農耕であったが、負担は増えたのだった。とはいえ元の狩猟採集の生活に戻ることも難しかった。長い時間をかけて農耕社会が定着したために、元の暮らしを知る人はおらず、人口が増加したためにもう引き返すことはできなかった。

 

この話は非常に切ない。農業革命は、権力者などの特定の誰かが企てたことではなく、日々の生活を少し良くしたいという人々の思いが長い年月をかけて積み重った結果だ。

 

同じような構図は現代でも見られる。

機械やコンピュータにできることが格段に増えているのに、なぜいまだ私たちは毎日働いているのか?

なぜ、AIに仕事を奪われるという警句が叫ばれるのか?人間が仕事から解放されるのは喜ばしいことではないのか?

社会全般にかかわる大きな事柄だけでなく、私たちの些細な日常にも、このような悲劇が潜んでいると考えると、やるせない気持ちになる。

 

人類は進歩しているのだろうか?