頭をくすぐられる ---もものかんづめ(さくらももこ)---
優れたものは力が抜けている。
「これは凄いんだぞ!なぜなら、こーで、あーで・・・・・・」と力まれると、その緊張感が気になってしまい、そのもの自体に集中できなくなる。
良いものは、なんかええなぁという感覚が自然と心に流れ込んでくる。
そのような脱力の境地をさくらももこの作品に感じる。
さくらももこの作品は、なんだか面白い。目の付けどころや言葉選びのセンスが卓越しているのもさることながら、文章のドライさが心地よい。
さくらももこの言葉には何かを強く訴えようとするエモーショナルなものがなく、身の回りのことへの素直な感想が淡々と述べられている。
その素朴な言葉の連続が、こよりのようにじわじわ脳味噌をくすぐり、やがてくしゃみのごとく笑いがバーストする。
面白いものは数あれど、どこかで受け手の感情を力業で揺さぶろうとする部分がでてしまう。さくらももこの文章にはそういうものが殆ど感じられない。
2018年にさくらももこが逝去されたとき、彼女のエッセイを読み漁った。その後、大きな喪失感に襲われた。以来、さくらももこの魅力は一体何だろうかという、モヤモヤした気持ちをずっと抱えてきたが、ようやく自分として納得のいく言葉にできた。
今更ながら、
さくらももこ先生のご冥福を心よりお祈り申しあげます。